(ニューヨークのマネージャーさん、凄い美人さんなんだよね)


紬花は英会話が得意ではないので挨拶しかしていないが、以前、テレビ会議で見た限りではハリウッド女優の如く美しい顔立ちをしたブロンドヘアの女性だった。

あゆみから聞いた話では、どうやらマネージャーは陽を気に入っている素振りを時々見せているらしい。

あなたに会いに日本に行きたいわと、社交辞令とも本気ともつかないことを口にしていたこともあったと。

それに対して陽はなんと答えたのか。

以前その話を聞いた時は時に気にならなかったのだが、思い出した今、何故か胸の内がひりつく。

その感覚は決して心地いいものではなく、紬花はうちに芽生えた悪いものを逃がすように息を吐いた。

気分を変える為にも、もう少し時間がかかりそうなら、デザインの参考になる資料でも探してみようかと席を立ち、服飾デザインや写真集、海外のファッション誌を資料棚から取り出す。

そして、それらを手に、オフィスに併設されているリフレッシュスペースへと移動した。


「着物の生地を使うのはもちろんだけど、もう少し和のイメージを濃くしたいのよね……」


洋装だけど和装にも見える。

そんな絶妙なラインのウェディングドレスを目指し、丸いテーブルの上にまずはと一冊の雑誌を広げた時だ。


「気配がするなと思ったら橘さんか」

「社長! お疲れ様です」


紬花は立ち上がると、リフレッシュスペースに現れた博人にお辞儀をする。