必要なことは意識して、けれど囚われ過ぎず、いつものように伸び伸びと。


「私らしく、エトワールらしいものを、ですね」

「ああ、だが、もちろん自分のデザインしたものに責任は持て」

「はい! ありがとうございます!」


陽のおかげで余計な荷を下ろせた紬花は、明るい表情でデザイン画と再び向き合う。

ペンを握る手は、先ほどまで進まなかったのが嘘のようにスラスラと動いてドレスの形を描いていき、紬花の横顔はどこか楽し気だ。


(思い出すな、昔の橘を)


やりたいことがあるのだと話し、共に挑戦した時に見せた楽しそうな紬花の顔を思い出した陽。

懐かしい記憶の中の紬花と今目の前にいる紬花の姿を比べる陽の瞳が優しく細められる。


「橘」

「はい?」

「お前ならやれる。大丈夫だよ」


低く柔らかな声色でそう告げた陽の微笑みは、今までに見たことのない穏やかさを滲ませていて、紬花の胸は甘く高鳴り、たまらず息を呑んだ。