「難航してるのか?」

「はい……考えれば考えるほどわからなくなってくるといいますか……」

「なるほどな。途中のものでいいから見せてみろ」


催促され、まだ人に見せられるレベルではないスタイル画を陽に手渡した。

陽の視線がノートの上を滑らかに動く。

そして、数度頷くと「引きずられすぎだな」と口にし、紬花にノートを返した。


「エトワールというブランドと、俺のデザインを意識しすぎだ」


ずばり見抜かれ、紬花の心臓が緊張を持ち、ひとつ重く打つ。

陽の瞳は真剣さを纏い紬花を見据えており、厳しい意見が形の良い口から紡がれる……のだと予想していたのだが。


「自分のデザインに自信を持て。お前は、お前らしく描けばいい」


陽は穏やかな口調でアドバイスをし、紬花を勇気付けた。


「私、らしく……」

「俺は、昨夜、橘が描いていたデザインを見て任せてみようと思ったんだ。あれには橘らしさがよく出ていた」


自分らしいデザインを。

確かに、変に気負い過ぎていたのかもしれないと、陽の助言に気づかされる。