一夜明け、エトワールでの仕事を終えて陽の家に帰宅した紬花は、夕食と入浴を済ませるとリビングで再びデザインノートにペンを走らせていた。


「和……着物の生地……ベールやブーケとの相性も考えると……」


次の打ち合わせは来週。

それまでにいくつかのデザイン画を用意し、提案しなければならないのだが、やる気が空回りしているのかうまく描けず、筆を動かしてもすぐに止まってしまう状態に陥ってしまっていた。


(エトワールに依頼するということは、御子柴さんのデザインするドレスが好きってことかもしれない……。それなら、もう少し透明感を意識した方がいいかも。けど、今回はテーマが和だから……)


あれこれと悩みすぎ、頭がごちゃごちゃしてきたため、紬花はいよいよ唸り始め、身体を逸らしてソファーにもたれる。

すると、いつからそこにいたのか。

視界の隅、キッチンカウンターのスツールに腰かけ、長い足を組んだ陽が紬花を見ていた。


「御子柴さん、いつの間にそこに」

「少し前だ。思案中のようだったから、話しかけないでおいた」

「あ、私にご用事ですか?」


立ち上がろうとすると「いや、水を取りにきただけだ」と、手元のペットボトルを揺らして見せる。