「き…聞いてっ、東條さんっ!本当に私は盗んでない!ほ……本当よ!!」


東條はニヤニヤと顔を不気味に笑わせながら私に近づいてくる。分かっているのだ、自分が投げた事も、私が盗んでない事も。

その笑顔を見た瞬間、私は諦めた。

あぁ…なんだ、分かってるんじゃん……
この人はただ私を痛めつける口実を作ってるだけ……筆をわざと忘れていったのかどうかは分からないけど、ストレスの吐け口。つまりはそういうことだ。


諦めのため息とともに下を向いた瞬間、東條は激しく私の髪の毛を掴むと、上に持ち上げたり下に押さえつけたり左右に振ったりとめちゃくちゃに私の頭を動かした。

「お前ウザいんだよ!オドミはオドミらしくしてろっての!!!私の筆弁償しなさいよ、アンタの汚ったない手の油がついてんだろぉ?!」

されるがままにしていた私は、自分の髪の毛が抜けていくのが分かるのが辛かった。

まるで自分の途切れ行く人生に近づいているようで、悲しくなるのだ。


そう思った頃、頭の激しい痛みは終わった。
何事かと思い顔を上げると、東條は教室の入り口方を見て、先ほどとは打って変わって女の顔になっている。