花霞は色鉛筆を置いて、リビングのソファにドサッと横になった。小振りのふわふわしたクッションを抱きしめながら、ゆっくりと目を閉じる。クーラーの冷気を感じ、花霞は身を丸める。そういえば、最近椋さんに抱きしめて貰ってないな。
 結婚して、退院もして一緒に住んで居るのに、どうしてこんなにも悲しくなってしまうのだろうか。
 花霞は、涙が出そうになるのを我慢するために目を瞑り続けた。本当ならば、椋が帰ってくるまで起きていよう。そう思ったのに、涙を我慢したせいで、ウトウトとしてしまう。
 少しだけ。ほんの少しだけでも、夢の中で椋に抱きしめてもらう。そんな淡い期待をして、花霞は眠りについた。




 頬に温かい感触があった。

 夢で怖い夢でも見たのだろうか。花霞は泣いている夢を見て起きると、現実でも泣いているという事がよくあった。
 そのため、涙を流しているのだろうか。どんな夢を見たのかは覚えていない。けど、怖い夢は見たくない。きっとそれは、椋と離れてしまう夢だから。

 そう思って、ゆっくりと目を開ける。
 照明の光が眩しくて、花霞は目を細めた。
 目が慣れてくると、目の前に心配そうに顔を覗き込む椋の顔があった。
 ずっと待っていた、愛しい彼。