「東京の研究所に行くべきだったのかもしれないけど、怖くて行けなかったの。お兄ちゃんがどこかで笑ってくれていると信じているから……」

藍は青いスカートを強く握りしめる。監察医になってから、ずっと藍は探し続けているのだ。幼い頃にした約束を果たすため、青磁のことを。

「……如月刑事にはこのことを話したの。彼もお兄ちゃんを探してくれているわ。でも、未だ手がかりすら見つかっていないの……」

「そんなことがあったんですね……」

窓の外を憂いを帯びた目で見つめ続ける藍に、大河はポツリと呟く。その表情はとても悲しげなものだった。

「俺にできることがあったら言ってください」

そう言う大河に、藍は悲しげに微笑んだ。リップクリームが塗られた唇から、「ありがとう」と綺麗な声が漏れた刹那、藍の瞳から涙がこぼれ落ちる。

「ごめんなさい」

藍はそう言い、席を立った。