「藍、またスーパースプレッダーに関する資料を読んでるの？」

朝子が藍の持っている資料を見つめる。藍は「ええ」と頷いた。スーパースプレッダーに関わることなど初めてだったため、何度も資料を読んでしまう。

「でも、あの時霧島さんが気が付かなかったら、今ごろどうなっていたかわかりませんよ。お手柄です！」

大河がニコニコと無邪気に笑う。朝子も「偉いぞ〜！」と藍の頭を撫でた。

法医学研究所には、今日もたくさんの遺体が運ばれてくる。病死、事故死など死因は様々だ。一つの事件に立ち止まっている暇がないほど、この仕事は忙しい。

その時、所長室のドアが開き、鼻歌を歌いながら研究所の所長の春川正人（はるかわまさと）が出て来る。

「皆さん、私は明日から家族とシンガポールに行って来ます！留守の間、研究所をよろしくお願いしますね」

ニコニコする正人に、大河が「いいな〜」と呟く。朝子が「お土産よろしくお願いしま〜す！」と笑った。