「なんじゃありゃ~!!」

壬生の部屋に入るなり、あたしは叫んだ。

「ど、どしたの、夏喜ちゃん」

壬生はたじろぐ。

「目が合ったよ?
だから挨拶しようとしたら、一瞥しただけで通り過ぎたよ、あの人!」

「ああ…、それは母さんだね。
母さん、俺には冷たいから…」

寂しそうに壬生が笑うから、あたしは思わず、壬生を抱きしめた。
すると壬生は、まるで子どものように、声を出して泣いた。

それから壬生は、あたしに、自分は養子である事、養子を迎えた途端に、自然妊娠が難しいと言われていた母親が妊娠した事、弟を妊娠した途端、母親が壬生に冷たくなった事、全てを話してくれた。

帰る時、壬生はあたしにキスをして、

「夏喜、ありがとな!
俺、夏喜が好き」

そう言ってくれた‐。