「熱っ……、痛いよミヤコさん、しかもベシャメルソースがベチャッて……」

「どっちのせいよ! いたずらにも程があるでしょーが! 飲み込んだらどーすんのよ! こんな大事なものグラタンに混ぜちゃうなんて……!」

 額を押さえるきぃくんに、ミヤコさんは怒鳴りつけます。

「大丈夫! ミヤコさんは絶対飲み込まない!」

「なんで!」

「だってミヤコさんは錠剤とかカプセル飲み込むの苦手だから! 違和感に気付いてぺって出す!」

「その前におえってなるわ!」

「はわ~。僕なりのサプライズのつもりだったんだけどー……」

「そうでしょーね! こんなことする奴なんてあんたしかいないからね! そもそもあんたは──」

 いつもそういういたずらばっかして──と、クドクドクドクド、ガミガミガミガミ説教をするミヤコさん。

 だけどきぃくんはそんな説教などどこ吹く風。どこか満足顔でニコニコしています。

「……いや、そんな『大・成・功』みたいな顔されても。全然大成功してないからね」

 げんなりと肩を落とすミヤコさんに、きぃくんがいつの間にか拾っていた指輪を差し出しながら言うのです。

「はい! 結婚してくれなきゃいたずらしちゃうぞ!」

「まさかのハロウィンノリ!? ちょっと早いし! ってゆーかもうしちゃってるからね、いたずら! しちゃった後だから! 事後だから!」

「これがホントの既成事実!」

「あ?」

「ひえ」

 それでも尚、きゅぴっとポーズを決めるきぃくんにミヤコさんが凄み、それにひゅっと隠れるように肩を竦めるきぃくん。

 プロポーズだろうが婚約指輪の贈与だろうが、いつもの光景に変わりありません。