ベッドでタバコを吸いながら
「何をしているのかなあ、私」
と綾乃は、思っていた。
初対面の貴史は、シャワーを浴びている。
優しい言葉で、褒めまくってくれたが48歳の主婦にそんな魅力があるはずもない。
ただ、男はヤリたいだけなのは百も承知だ。
わかっていてどうしてこうなるのだろう。
旦那の修司の事も浮かばず申し訳ないとも思わなかった。
ただひとつ。
やっぱり越えられない。
それだけだ。
綾乃は一年前に一度会ったきりのマサアキをずっと想ってきた。
マサアキを忘れさせてくれる人間を探しているのだ。
マサアキという名前さえ本名かわからない。
何も知らない。
でも、あんなに魅力的な男はいなかった。