先輩の家はマンションの二階の端だった。

「……一軒家じゃないんですね」

「二人暮らしなのに一軒家じゃ広いだろ。それに、ほぼ俺が一人暮らししてるようなもんだしな」

 吐き捨てるように言い、先輩はドアを開ける。

開けた先は、異様な雰囲気を醸していた。

 台所の近くに置かれた灰皿は煙草の吸殻であふれており、ハエがまっている。床はところどころが赤く変色していた。

靴を脱ぎ、しゃがんで赤いところを触った。ザラザラしている。何かの塊だろうか。

「……春樹、それあんま触んないほうがいい」

 先輩が俺の腕を掴む。

「なんですかこれ」

「なんだと思う?」

「……まさか、先輩の血ですか」

「まさかもなにも、それ以外に答えないだろ」

 自虐するように言い、先輩は声を上げて笑った。