「家のこと仲良い奴にしか話してないんだよ。廊下で言うな」

 温室まで歩いてから、先輩は髪をひっかきながらばつが悪そうに言った。

「……すみません」

「まぁそれに関してはいいわ別に。内密にしろって言ってなかったし」

 ベンチに座って先輩は言う。

 先輩はポケットから煙草を取り出すと、ライターをつけてそれを吸った。

「先輩」

 先輩の手を叩いて、俺はライターと煙草を床に落とした。

「あ? なんだよ」

「……その煙草はなんのためですか。親のせいでたまったストレスの発散ですか。それなら、そんなストレス俺が埋めます。

 俺じゃ足りないですか」

「……じゃあ勝手についてくれば? 引いても知らねぇからな」

 吐き捨てるようにいってから先輩は立ち上がり、落ちた煙草の火をスニーカーで消して歩き出す。俺は慌ててその後を追った。