こんな環境にいるなんて思ってなかった。この人を守りたい。……この人が傷つくのをもう見たくない。


「……普通じゃないからなんだ」

 真顔で先輩はいう。

「……普通じゃないから、どうしてくれるんだお前は」

 低い男の人が出すような声で言われる。

まるで苦しみが声になって現れているようだ。

それもただの苦しみではない。まるで悪魔のように深く、暗い。

絶望を体現したかのようなその声に、思わず体が震える。

「助けます!貴方を!」

 それでも俺は、喉仏から無理矢理声をはりあげて叫んだ。

「……どうやって? 親と和解する気は無いからな。かといって、親を警察に突き出したいとも俺は思えない。

……このままでいいんだよ。俺の環境は。それが一番平和だ」

「……そんな平和、いつか壊れます。まやかしです。だって、今は会わずに済んでても、いつまた会うかわからないじゃないですか!」