「そんなことはない、綺麗に積み上げることができれば河の向こうに渡してやるさ」


「河の向こうには何があるの?」


「極楽だ、罪が償われればお前もそこで幸福になれる」


希望を持たせること、それも石を積ませる為に重要なことだった。

大抵の子どもはこの言葉に乗せられ、石を積み上げようとする。

しかし、大鬼が見てきた中で、石を積み上げ切った子どもは出たことがない。


「そうなんだ」


河の向こうを見つめた少女に、大鬼はしめしめ、と思った。

所詮は子ども、こんな簡単な言葉に騙される。

しかし大鬼の期待とは裏腹に、次の瞬間少女が見せた行動は、まるで明後日の方向へと走り始めるというものだった。