『…とにかく、絶対大声出さないでね。』



雅「一番大声出してるの楓だけどね。」



『誰のせいだと思ってるの二人が危機感ないから…!!』



麗子「喧嘩してる場合じゃない気がするのは私だけ?」



ママにそう言われハッとし、仕方なく口を閉じる。



…どうする、どうする、今の状況を脱する何かを考えないと…まずい。



『…とりあえず夜明けまで待ってこの森から出て…それからだ。』



今の僕達の格好は確実におかしなものだろう。



だから、で絡まれたら元も子もないけど…とりあえず、鬼に喰われるよりかはマシなのではないかと思った。



麗子「確かに楓が言う通りだよね…。」



雅「炭治郎に会ってないのに死ねない…。」



『いや僕達死んだよ一回。』



そう言うと、二人がまたもやハッとしたような顔をしてから…僕の肩を揺さぶった。



麗子「何があったの!?」



雅「私達バス乗ってたよね…!?」



『ちょ、静かに…!』



二人の口を抑え、鬼が来てないのを確認してから口を開く。



『…僕達の乗っていたあのバスは事故に遭ったんだ…。

…僕は、二人が絶命していくのを見ていた…自分の内臓に骨が刺さる所さえ感じているくらいで…。』



そうすると、痛々しい顔を向けてくる。



…あの痛みは忘れられない…忘れられるはずがない。



『…それで、僕は死ぬんだな…二人を追うんだ、って思って…走馬灯も見る余裕がないまま、死んだんだ。

…なのに、気が付いたらここに居て…死んでトリップした、っていうのが一番筋が通っているかな、って思ってるよ。』



そう言えば、二人は少し複雑な表情をした。



…そうもなるはず、二人は僕と違って元の世界に友人だって居たんだ。



なのにいきなりバスの事故…なんて不運なことのせいでトリップ…。



いくらハマり始めていたアニメの世界とは言え、決して笑顔で受け入れられる事実ではないだろう。



僕だって友人はいなかったし、家族はここに居るものの、鬼滅の世界というだけで憂鬱で仕方がないんだ。



…いや、死ぬよ?



普通に考えて…僕達、死ぬよ?



この鬼の多い世界で、家もないまま生きていけるか…って、聞かれたらNOだよ?



普通に考えてそうじゃん?



…ああ、僕、善逸くん守りたいとか言いながら…同じ思考だったんだな。



そう思って、少し自分に呆れてしまった。