『…いった…』



目を覚まし、ついさっき起こったことを思い出して頭を抱える。



…事故だ、バス事故…大事故が起こった。



乗客は田舎の分少なく、僕達家族だけだった…だけど、運転手は居たな…あれ、でも帽子?っていうかを深く被りすぎて…ベテランさんか見ることが出来なかった…。



事故が起こり、あまりの痛みに見を捩りながら…隣で血だらけになる雅と、その奥のママを見た。



それがあまりに痛々しく見ていられなくて、目を逸らしたいとどれだけ思ったことか。



嫌だった、辛かった、例え何があってもこの二人は僕にとってかけがえのない家族で…変えられない存在だったのに…。



僕には何も出来ないから、この状況を脱することなんて出来ず…二人が絶命していく様を目に焼き付けるだけで。



それと同時に、とんでもない…今まで感じたことのない痛みが体に走った。



骨折した骨が内蔵に刺さっていると気付くまでに、時間なんてそう掛からなくて。



嗚呼、僕死ぬんだな…。



そう思っているのに走馬灯など見えず、ただただ頭の中で…二人に語り掛けていた。



助けられなくてごめんね、僕も今から逝くからね。



そんな風に声を掛けていたはずなのに…何故、“目を覚ました”?



そう思い痛む頭を抑える。



体の激痛は何故か収まっており、痛むのは何故か頭だけ。



とりあえず状況を把握しなければ…その一心で、辺りを見回す。



『…雅、ママ、』



隣を見れば、二人がすやすやと眠っていて。



さっき目に焼き付けた二人の死に様はまるで嘘かのように思えてしまうほど。



だが今僕達が居るのは暗い…多分、森。



…何処だよ、此処…。



そんなことを思い、立ち上がり…少し歩いてみようと先へ進む。



『…森…なのは分かるけど…他が分からない…。』



そう呟きながら、ただただ歩き続ける。



さっきの所を見失わないように…二人を、見失わないように。



『…?』



…何だか、嫌な感覚がする。



その感覚がした途端、すぐに走って二人の元へ行く。



もし二人に何かが起こったりしたら、僕は僕を責める。



“例え何があっても”、二人は僕にとって…かけがえのない存在だから。



…何があっても、守らなければいけない、二人だから…。