麗子「にしても…夜が明けるまであとどのくらい?」
『…分かんない。』
雅「眠いー…」
『ばっ、寝たら死ぬよ…!?』
雅「分かってるー…!」
…ヤバイな、本当に寝そうだ。
でも今寝させるわけにもいかない…。
麗子「…とりあえず、少し歩こう?このままじゃ寝ちゃうから。」
『…そう、だね。』
正直、行ったらいけない気もしてる…でも、寝る方が危ない。
…てかおいこら雅、この状況で眠くなるとか神経強すぎねぇかお前は何なんだ。
『手、繋ぐか。』
雅「んー…」
普段は絶対に手なんて繋ぎたがらないのに、何故か普通に受け入れた。
相当眠いなこれは…おぶってやっても良いけど、そうしたらいざという時急げない…手を繋いでいた方がまだ早く行ける。
『雅、大きくなったねぇ…。』
雅「当たり前でしょ…?私もう高校生だよ…。」
…ああ、僕と暮らしていた頃は、まだ中学生で。
受験がどうの…って話もしたなぁ、なんて考える。
麗子「何か、二人が手を繋いでいると昔に戻ったみたいだね。」
そうママに言われ、少し空を見上げる。
…うん、そうだね、何だか懐かしく感じるよ。
そう思いながら雅の方を見て微笑む。
…最後に手を繋いだのは、僕が小学6年生の時…つまり2つ下の雅は、小学4年生だった。
あんなに小さかった手が、今ではこんなに大きくなっていて。
ああ…段々遠くなっていく…みんなは、僕を置いて大人になっていく…僕を置いて変わって行ってしまう…。
『…いかないで、』
聞こえないよう、掠れた小さな声で言った。
無理な話だ、人はいずれ変わって行ってしまうものだから。
変わらなければ良いのに、なんてそんなのはただの僕のご都合でしかなく、みんなは早く変わりたい…大人になりたい…。
…いつまでも子どもで、変われない僕とは大違いなんだ。
羨ましいなぁ…僕もそこに並びたい…なんて、到底無理な願いだけど。
…過去に囚われ続けているうちは、無理だよなぁ。
『………雅、ママ。』
二人「???」
『走れ!!!!』
そう叫び、二人を押してから走る。
…気付かない内に、後ろまで鬼が迫って来ていた。
…まさか、こんなにも、気付かないなんて。