暮人さんはつかんでいた胸ぐらを離し、今度は月城組組長を抱きしめた。



「……もう、充分すぎるほど傷ついただろう。充分すぎるほど失っただろう。……もう、やめよう。
……あの時、おまえをちゃんととめてやれなくて、本当に悪かった。おまえは抱え込みやすい性格だから、もっとちゃんと見ていてやるべきだったのにな……」


声は弱々しくなって、和服が赤くなっていく。



「俺は、人を殺した。おまえの妻を……。もう、元に戻れないところまで来てる……」


小さく月城組の組長は言うと、暮人さんは離れ。
拳を大きく振り上げ、また月城組組長の頬に拳を入れた。


今度はさっきとは反対の頬。
鈍い音がして、2人はその場に倒れ込んだ。