「森泉さーん」

数人の男子から呼ばれた。

「なんだろう?」

私は萌ちゃんに断りを入れて、男子たちのところに行く。

その途中、雅くんに呼び止められた。


「どうしたの?」

「あっ、ちょっと男の子たちに呼ばれて……」


昨日の『ねぇ、離れてよ』と言いながら爪を噛んでいた雅くんの姿が一気にフラッシュバックする。

つい身構えてしまう私に気づいたのか、雅くんは眉尻を下げながら笑う。


「嫌われちゃったかな」

「あ……ううん、ごめんね」


うまくごまかせない。
でも、嫌いとかじゃない。
ただ、怖いんだ。
でも、正直に言うわけにもいかないし……。

困り果てていると、雅くんはふっと微笑んで私の肩に手を載せる。


「たとえ嫌われてても、いいんだ」

「雅……くん?」

「きみの意思なんてどうでもいいんだよ。俺は欲しいものは全部、手に入れてきたんだから」


そう言って、私の横をすり抜けていった雅くんは取り巻きの女の子らしき生徒と合流する。

その女の子たちは私をちらりと見て、ふいっと顔をそむけた。

なんだろう……私が雅くんと話してたから嫌な思いをさせちゃったのかな。

気にはなりながらも、私は呼ばれていたことを思い出して男の子たちのところへ行く。


「お待たせしました」

「全然いいよ。それよりさ、森泉さんも休憩中でしょ? 俺たち、ちょっと話したいなーって思っててさ」

「そうだったんだ」


相づちを打ちつつ、私は剣斗くんを目で追ってしまう。

すると、それに気づいた男の子が私の前に回りこんで視界をさえぎった。

「やっぱり、森泉さんもああいうスポーツができる男が好みなのかな?」

「恋愛対象の話? だったら、スポーツうんぬんは関係ないよ。好きになった人がタイプだから」

「それを聞いて安心した。まだ、俺たちにもチャンスがあるってこ……」


男の子がなにかを言いかけたとき、ビュンッと風を切る音がした。