「ケンケン人気だねぇ」


萌ちゃんが私の腰に抱きついてくる。

私と萌ちゃんは同じチームで、今は別のチームが試合をしているので休憩中だ。


「剣ちゃん、かっこいいもんね」

そう口にしたら、ズキッと心臓のあたりが痛んだ。

あれ、なんだろう今の……。

胸を押さえる私には気づかずに、萌ちゃんは言う。


「あの、クールで野性的な感じも、学園に通うお嬢様からしたら滅多に遭遇しないタイプだからねー。惹かれちゃうのかも」


たしかに、今まで出会ったことのない雰囲気の人かも。


「萌ちゃんは? 萌ちゃんも剣ちゃんに憧れる?」

「むふふ、心配? 萌がケンケンを好きになっちゃうかもーって」

「え……」


なぜか、ドキッとした。

萌ちゃんが剣ちゃんを好きになる。

そう考えただけで、胸が苦しくなった。
黙りこんでいると、萌ちゃんがニコッと笑って私の顔を覗きこんでくる。

「冗談だよっ、ケンケンはかっこいいけど、萌はそれだけで好きな人を選んだりはしないのだ!」

それを聞いて、どうしてなのかほっとする。


「じゃあ、萌ちゃんのタイプは?」

「ありのままの萌のことを受け入れてくれる人なら、ウェルカムだけどね!」

「ふふっ、そうだよね。中身が大事だよね」


私だって、剣ちゃんの見た目が好きなわけじゃない。

優しくて、どんなときも冷静で強い。

そんな剣ちゃんに憧れてる……って。

私の剣ちゃんに向ける好きって、どういう種類の好きなんだろう。

友情、恋?

それとも、もっと別のなにか?

好きなことには変わりないけれど、まだその名前を見つけられずに剣ちゃんを眺めていると……。