竹部さんに抱かれる緊張が入り混じったドキドキとは違って、もっと穏やかで安心感があった。

だけど、その安心感の中に胸の奥がきゅーっと締め付けられるような感覚が私の中にまだ残ってる。

翔に感じた初めての男の香り。

いつも優しくて、私を自由にしてくれる彼の中に自由の利かない私を感じていたからだろうか。

彼は紛れもなく男で、私ですらどうしても抗えないものがあるってことに気づいてしまったのかもしれない。

いやいや。

余計なことは考えず、今は食事に集中しよう。せっかくの豪華な料理が冷めちゃうわ。

パスタを頬張った時、テーブルの上に置いていたスマホがLINEを着信した。

【お気に召しましたでしょうか?お腹が落ち着いたらゆっくり休んで。おやすみ 翔】

いつもの、普段と変わらない翔からのメッセージなのに、何度も読んでいたら次第に鼓動が速くなっていく。

体中が熱くなって、余計なことを考えないでおこうと思えば思うほど考えてしまう。

なんなの、これ。

きっと翔が私を抱きしめたりなんかしたからだ。

どうしてそんなことしたのよ。

これまでずっと守ってきたじゃない。

私が彼と別れた時はいつだって飛んできて慰めてくれた。

「またいい男見つければいいじゃん」

なんて言いながらワインをなみなみとついでくれる翔の笑顔。

その笑顔が今はただの笑顔に感じられくなっている。

まさかだよね?

どんな気持ちで私と一緒にいてくれたの?

それに、翔ってあんなに素敵な笑顔をいつも向けてくれてたっけ?

あんなにかっこよかったっけ??