「ここまで来れただけでも十分だよ」
「ここまで来れたのにって思うんだ」
翔の祖母への気持ちが痛いほどに伝わってくる。
「ありがとう」
思わず、翔の横顔に言わずにはいられなかった。
照れているのか聞こえなかったからなのか、翔は何も言わず前を向いたまま車いすを押し進める。
姫路城は想像以上に大きくて白くて、近づいてくるたびに圧倒された。
城の真下まで来て、祖母の笑顔とたくさん写真を撮る。
「こんなに気持ちがいい日は久しぶりだよ」
「そうだね。ずっと病院の中じゃ気持ちは晴れないもん」
「本当に一緒に来れてよかった」
祖母は私の両手をしっかりと握りしめる。
私は何も言えずただ頷いた。
姫路城をバックに祖母に手を握られたこの瞬間を私はきっとずっと忘れないだろうと思う。
だめだ。また泣きそうだ。
気を利かせてくれたのか、私たちから少し離れた場所で座っていた翔がこちらにやってきた。
そして、少し疲れの色が見え始めた祖母に「そろそろホテルに帰りましょうか」と促す。
「そうだね」
祖母も素直に翔の言葉に従った。
出会ってからたった数時間しか経っていないのに、祖母はすっかり翔を信頼しきってる。
それはきっと翔だからだ。彼以外の人だったらこんな風にはならない。
祖母も昔から結構気難しい人だから。
ほんとよくわからないけれど翔って知れば知るほど不思議な人。
でも、私にとってはかけがえのない男友達なんだ。
****************
ホテルに着くと、さっそく心配しているであろう母に電話をかけた。
『おばあちゃんはどう?』
「大丈夫よ。姫路城もたっぷり堪能したわ。後で写真送るね」
『よかった。そちらは寒くない?』
「そうね、天気はよかったからいつもよりは暖かかったかも」
『でも、おばあちゃんは長時間の外出は本当に久しぶりだから夜も早めに休ませて』
「わかった」
電話を切った後、翔が私と祖母の部屋にやってきた。
一応、今回は私達とは別に部屋を取ってくれている。
まぁ当然と言えば当然なんだけど。
松山城へは……本当に二人一部屋なのかな。
ふいにそんなことを思い出して、翔の顔を見ながら一人ドキドキしていた。
「ここまで来れたのにって思うんだ」
翔の祖母への気持ちが痛いほどに伝わってくる。
「ありがとう」
思わず、翔の横顔に言わずにはいられなかった。
照れているのか聞こえなかったからなのか、翔は何も言わず前を向いたまま車いすを押し進める。
姫路城は想像以上に大きくて白くて、近づいてくるたびに圧倒された。
城の真下まで来て、祖母の笑顔とたくさん写真を撮る。
「こんなに気持ちがいい日は久しぶりだよ」
「そうだね。ずっと病院の中じゃ気持ちは晴れないもん」
「本当に一緒に来れてよかった」
祖母は私の両手をしっかりと握りしめる。
私は何も言えずただ頷いた。
姫路城をバックに祖母に手を握られたこの瞬間を私はきっとずっと忘れないだろうと思う。
だめだ。また泣きそうだ。
気を利かせてくれたのか、私たちから少し離れた場所で座っていた翔がこちらにやってきた。
そして、少し疲れの色が見え始めた祖母に「そろそろホテルに帰りましょうか」と促す。
「そうだね」
祖母も素直に翔の言葉に従った。
出会ってからたった数時間しか経っていないのに、祖母はすっかり翔を信頼しきってる。
それはきっと翔だからだ。彼以外の人だったらこんな風にはならない。
祖母も昔から結構気難しい人だから。
ほんとよくわからないけれど翔って知れば知るほど不思議な人。
でも、私にとってはかけがえのない男友達なんだ。
****************
ホテルに着くと、さっそく心配しているであろう母に電話をかけた。
『おばあちゃんはどう?』
「大丈夫よ。姫路城もたっぷり堪能したわ。後で写真送るね」
『よかった。そちらは寒くない?』
「そうね、天気はよかったからいつもよりは暖かかったかも」
『でも、おばあちゃんは長時間の外出は本当に久しぶりだから夜も早めに休ませて』
「わかった」
電話を切った後、翔が私と祖母の部屋にやってきた。
一応、今回は私達とは別に部屋を取ってくれている。
まぁ当然と言えば当然なんだけど。
松山城へは……本当に二人一部屋なのかな。
ふいにそんなことを思い出して、翔の顔を見ながら一人ドキドキしていた。