9.姫路へ

急でどうなることかと心配したけれどなんとか休みも取れ、翔に任せっぱなしだった姫路行の日が明日に迫っていた。

一昨日のお昼過ぎ、祖母も入院していたのが信じられないくらい元気な様子で退院し、姫路城に行くのを今か今かと楽しみにしている。

翔に祖母の現状と医師からの所見を伝えると、あまり長時間の車移動は祖母の体に負担をかけるだろうと判断し、とりあえず大阪までは飛行機で向かうことになった。

大阪からは翔が手配してくれたレンタカーで姫路まで移動する。

確かにその方が移動時間は短くて済むし負担は少ない。

ホテルも姫路の大きな病院の隣に位置するところを押さえてくれた。

こういうとき、翔の細やかな気配りと段取りの早さに感服せずにはいられない。

夜、翔からの電話。

『おばあちゃんの体調はどう?』

「ええ、大丈夫よ。早く行きたくてうずうずしてる」

『そりゃよかった。でもあまりはしゃぎすぎたら血圧上がっちゃうからほどほどにって言っておいて』

「そうね、確かにそうだわ。言っておく」

翔のそんな言い方に思わず笑ってしまう。

「今回の姫路行は本当にありがとう。翔がいなかったら実現しなかったわ」

『どうってことないさ。俺も姫路城行きたかったし』

電話の向こうで照れくさそうな顔をしている翔が目に浮かぶ。

「仕事は大丈夫だったの?」

『一泊二日だし、帰ってきた日の夜、夜勤に入るって言ったら許してもらえた』

「夜勤?翔の仕事って夜勤もあるの?」

『まぁね』

ますます翔という人間が謎めいてくるんだけど。