「なにそれ?!」

「私も驚いてすぐに何のことだかわらからず黙っていたら、会社のものはUSB含めその他資料やファイルは持ち出し厳禁だから覚えておくようにと注意されました」

「もちろん、萌はもって帰ったりしていないんでしょう?」

「はい、もちろんです。バッグの中身も毎日何度も見てるのでUSBが入ってないことくらいわかってました。それで、すぐに立花さんのところに話を聞きに伺ったんです」

「立花さんは何って?」

「さっき、私が席を外している時、椅子の上に置いたままになってた私のバッグの中にUSBらしきものがちらっと見えたのでまさかと思って確認したら探していたUSBだったって。で、すぐに原田チームリーダーに見つかった旨報告したら、どこにあったのかってしつこく聞かれたから私のバッグの中にあったと正直に伝えてしまったと」

おかしい、絶対おかしい!

きっと立花さんが自分のどこかから見つけて、萌になすりつけたとしか考えられない。

「明日、原田さんには本当のこと言わなきゃだめよ」

あー、興奮してきた。

気を静めるために?グラスに残ったお酒をぐいっと一気飲みする。

「もういいんです」

それなのに、萌は自信なさげな小さな声でそう答えた。

どうしてそんなこと言うの?
思わず、目をぱちくりさせながら萌に尋ねる。

「それで萌はいいの?」

「私がそんなこと言ったら立花さんの立場も悪くなるし、ひょっとしたら本当に私のバッグに入ってたのかもしれないし……」

「そんなこと、おかしいよ」

「おかしいのはわかってます。でも、立花さんとこれ以上事を荒立てたくないんです。これからは預かったUSBはすぐに立花さんに返すようにすればいいだけの話ですから」

「前も話したけれど、きちんと正しいことを伝えるのも、萌の仕事の一つなんだから必要なことなの。立花さんに気を使ってばかりじゃ萌がつぶれちゃうわ」

萌は首をすくめると寂しそうに笑って首を横に振る。

「私、今の仕事向いてないのかもしれません……」

なんだかそれ以上何も言えなくなってしまい、私も長めの息を吐いて座りなおした。