なんか嫌な予感がしていた。

「そのことははっきり立花さんには言ってる?ちゃんと返しましたって」

萌は困ったような顔をしてうつむいた。

「だめよ、そんな自信のない顔をしちゃ。返したんだったらきちんと立花さんに言わなくちゃ」

「でも、もしかしたら私の記憶違いってこともあるかもしれないから」

「返したって記憶があるってことは間違いないんでしょう?もし言いにくかったら『確かに返したと思いますが、もう一度私も探してみます』っくらいにとどめとかないと、どんどんつけこまれちゃうわよ」

「はい、そうですね。がんばって言ってみます」

「確かに立花さんに言い返すことは至難の業だけど、自分自身を守るためには大切なことよ。そうやってきちんと相手に伝えることも萌の仕事の一つだと思えばいいわ」

「仕事?」

「うん、そう。仕事だって思えば多少気持ちも楽でしょう?」

「確かにそうですね」

萌は妙に納得した表情で何度も自分に言い聞かせるようにうなずいていた。

ほほう。

翔のアドバイス、萌の心に響いたみたいじゃない。

やっぱり侮れないわ、翔って。

それにしてもそんな大事なUSB一体どこにやっちゃったのかしら。

立花さんはあんなだけど、とりあえずキャリアもあるし、そんなくだらないミスを犯しそうにないんだけどな。

心の中で首を傾げながら、真っ黄色のおもちゃみたいな卵焼きを半分かじった。