ペーパードライバーの私は車で姫路までなんてとても無理な話。

私が車の運転さえできれば、もっと祖母を色んな場所に連れていけるのにっていつも悔やんでたから、そんな翔からの言葉はとても嬉しかった。

だけど……。

「ありがとう。でも、さすがに姫路までなんて厚かましいわ。祖母の今の状態じゃ長距離の移動も難しいかもしれないし」

「厚かましいなんてことはないさ。俺と美南の仲だろ?」

そうなんだけど。

小さく息を吐き黙ったままうつむく。

「じゃ、もし本当に必要な時はいつでも頼って。遠慮なんかいらないから」

「うん。その時はお願いする。だけど、忙しいのに大丈夫なの?」

「美南の頼みだったらどうとでもするから大丈夫さ」

「そういう大丈夫は、本当の大丈夫じゃないんだけどね」

まっすぐ私を見つめる翔に笑うと、彼も口元を緩めて頷く。

祖母を姫路まで連れていくなんて考えもしなかった。

大変なことだし、途中で祖母の身に何かないとは言えない危険もはらんでるのに、もし本当に翔が一緒に行ってくれるなら、不思議と行けるような気持ちになっていた。

例え叶わなくても、そう言ってくれた翔がそばにいるだけで心が温かい。

私にとって大切な男友達であり、かけがえのない人。

それ以上でもそれ以下でもないそういう関係なんだ。

きっとこれからも。