それにパンドラの箱を開けてしまって、後悔してもしきれない状態になるかもしれない。

知ってしまった後に起きる二人の変化が悪い方へいってしまうことが怖いような気もする。

知らないでここまで気分よく来てるなら、知るリスクを負う必要もない。

「俺の質問そんなに難しい内容だった?ものすごく複雑な顔してるけどさ。それにしても、このアクアパッツァうまいぞ」

翔は豪快にその料理を口いっぱい頬張って笑っていた。

私が変なんだろうか。
彼の質問に対して複雑に考えたりして。

男ってほんと……。

ワインを飲み干した翔は「追加ボトル頼む?」と尋ねてきた。

男ってほんと……女とは全く異なる生き物だってことだけは間違いない。

結局私の答えは最後まで聞かないのかい!

「次は白、頼もう」

私はそう言うと、気を取り直して皿に盛られた魚の固まりを口にほおりこんだ。

「おばあさんはまだ入院してるの?」

白ワインを追加で頼んだ後、翔が静かに言った。

祖母のことは時々翔と話していたし、彼もまた気にかけてくれる。
だって祖母は私の城好きの原点を作ってくれた人物だから。

「あまりよくないわ。ほとんど寝てるし」

「まだ話はできるの?」

「ええ、起きてる時は」

結局行きたがっていた姫路城には連れて行けてないことが、重たく心にのし掛かってくる。

「おばあさん、今のうちに姫路城に連れて行けないかな。俺、車も出すし付き添うから」

え?

突然の思いがけない提案に目を丸くして翔の顔を見た。