翔はクッとうつむいて笑う。

なんだろ。

おちょくられてるのか、真面目な話をしてるのか、はぐらかされてるのかわからなくなっていた。

「男と女ってお互い意識してたら、もうどにかなってるでしょ。大丈夫だよ、俺は二人部屋でも」

更に小さな目を大きく見開いて見つめ返す。

そして自分が息をしていないことに気づき、慌てて大きく息を吐いた。

「とりあえず、彼も年末旅行行こうって誘われてたから日程がかぶってないかだけ確認しておくわ」

スマホを取り出し、彼にLINEを打っていたら翔はぷいっと横を向き椅子の背にもたれた。

「またどうせ呼び出しかかって当日ドタキャンされるんじゃない?」

「それならそれまでよ。お医者様はね、あなたみたいに暇じゃないの」

翔は自嘲気味に笑うと「暇ねぇ」と言いながら腕を組む。

私が絡む予定だったのに、珍しくやたら翔が絡んできて今日は一体どうしたっていうのかしら。

忙しいであろう竹部さんに手短に確認LINEを送った。

いつもなかなか手があかない竹部さんの返事は深夜を回ることが多かったからそのままスマホはバッグに戻す。

「また彼から返事があったら連絡するわ」

「わかった。もし美南が行けなくても俺は一人で行く予定だから」

「念のためいつ行くのか聞いておく」

私は手帳を取り出し広げた。

翔はそんな私を見て吹き出す。

「行く気満々じゃん」

「違うわよ。念のためよ。だって私もあなたとっていうことは置いといて松山城には行きたいもの。もし彼との日程とバッティングしてなかったら一緒に行きたい」

「なんだかんだで結局行くんだ」

「だって、何もないんでしょ?友達なんだから」

「ま、その時になって俺が男性ホルモンに負けた時は覚悟しといてね」

何が男性ホルモンだ。

と心の中で悪態つきながらも、妙に胸の奥がざわざわしていた。

そんなこと言ったらまた意識しちゃうじゃない。

翔は単なる友達。

唯一の男友達なんだから。この関係がいいの。

この関係は絶対崩しちゃいけないってずっと思ってきたんだから。