「一応彼氏いる身なので、そんな気軽に行きますだなんて言えない」

膝の上に置いた手はなぜだかぎゅっと固く握りしめていた。

「友達だろ?俺たち」

うつむく私の正面で普段よりもやけに低音の翔の声が響く。

ちらっと視線だけ上げると、翔は私を試すような視線を投げかけていた。

すぐに視線を逸らして答える。

「もちろん友達だわ」

「じゃ、問題なし」

「で、でも、やっぱりまずいじゃない?」

「なにが?」

なにが?って。

本気で言ってるんだろうか。

もう一度翔の顔をチラ見してみる。

翔はワイングラスを顔の前で揺らしながら、そのグラスの向こうからニヤッと笑っていた。

絶対、おちょくってる!

「友達は友達でも一応男女だからね、彼氏だっていい気しないでしょう?そんなこともわからないわけ?」

「男と女ねぇ」

「そうよ!」

「一応俺のこと男として見てくれてるんだ」

「……」

「もし二人部屋にしたらょっとは意識してくれるの?」

「ばっかじゃない?」

なんだか顔が熱くなっている自分が嫌だった。

そんなこと、今日の今まで意識したことなんてなかったのに。

「実はもう十二月二十五、二十六日で部屋も押さえてるんだけど、二人部屋じゃまずかった?」

嘘でしょう?しかもクリスマス被ってるし。

目を大きく見開いて翔の顔を見上げた。