そういえば、翔は私にも時々突き放したようなアドバイスをすることがあったっけ。

でも、そのあと、私はその言葉を必死にかみ砕いて、珍しく普段使わない脳みそをフル回転させてなんとか自分なりの答えを導き出す。

それが翔のアドバイスにふさわしい答えかどうかはわからないけれど、一旦押し寄せる不安は解消できた。

萌が立花さんに自分の気持ちをちゃんと伝える……か。

萌っていう人間が意外に一本筋の通った人間だたとしたら、きっと時期を見計らって言えるような気もした。

そうね。そうやって自分自身を守ることも仕事の一つなのかもしれない。

翔の言うことにいつも間違いはなかった。

明日にでも早速萌に伝えてみよう。思い切り翔の受け売りだけど。

運ばれてきたミネストローネを口に含む。

「うわ、おいしい」

「うまいな」

二人で顔を見合わせて笑った。

「あのさ、今日の本題に入りたいんだけどいい?」

翔はそう言うと、ミネストローネを掻きこみ、丸い固焼きパンをちぎって口にほおり込む。

本題っていうと、おそらく例の松山城のことだ。

一緒に泊まりだなんて初めてのことだから、思わず「うん」と言ったまま私も口をつぐむ。

「年末ならなんとか休み取れそうなんだけどどう?」

年末?

もちろん、うちの会社も年末なら休みだから構わないんだけど、確か竹部さんも年末旅行に行こうとか言ってなかったかな。

っていうか、彼氏のいる人間に旅行行こうだなんて普通誘う??!

「年末は先約あり?」

翔は前髪をかき上げると、少し寂しそうな目で私を見つめた。

ワインを飲んでるせいか、瞳が潤んでいるみたいで……。

な、なによ。そんな切ない表情向けちゃって。

いつもと違う雰囲気に調子が狂うじゃない。

思わず、そんな彼の眼差しから視線を落とす。