私は息継ぎも忘れて、今日あった立花さんとかわいい後輩の萌との関係について話した。

ほんの少しだけ話を膨らませて。

「ドラマの中に出てくる、まさにお局様だな。ほんとにそんな先輩いるのかよ」

「これがいるんだってば!自分の仕事ほとんど後輩に押し付けていいとこどりだけするんだから。ほんと、信じられないったら」

一通り私の話を聞いた翔は、カルパッチョをつまみグラスに残ったワインを一気に飲み干す。

そして空になっていた私のグラスと自分のグラスにワインを注ぎながら言った。

「でもさ、その後輩の子も、本当に自分がやばい状況なんだったらきちんと自分の気持ちを先輩に伝えればいいのに」

「それができればこんなことにはならないわよ。できないから困ってるの」

「できないんじゃなくてしなくちゃ」

「相手は超意地悪な大先輩なのよ。どうやって言うのよ」

「そんなことしるかよ。それを考えるのもその子の仕事じゃないの?」

「翔、冷たいこと言うのね」

「そう?」

「そうよ。もっと気の利いたアドバイスはないの?いつもしてくれるじゃない、私には」

翔はワインボトルのコルクを締めると、私の目を捉えて口元を緩める。

「これもアドバイスのつもりだけど?」

「無理なのわかってて言うのね。そんなのアドバイスじゃないわ」

「無理かどうかはやってみなきゃわからないさ」

グラスを傾けた彼の唇に赤い液体が吸い込まれ、喉が上下に動いている。

なんだかそんな翔の『部分』をまじまじと見たことがなかった私は柄にもなくドキッとしていた。