「立花さーん!」

イライラしすぎて、私の声も一瞬裏返ったかもしれない。

「何?」

怪訝な表情で私の顔を見た立花さんににっこり微笑む。

「あの、よかったらプリントアウト、私がついでにしちゃいましょうか?丁度今パソコン立ち上がっていてすぐ出せますけど」

「私は若葉さんと話しているの!これも指導の一環だわ。横から変な助け船出さないでちょうだい!」

私の横やりが気に入らなかったのか、立花さんの白い顔がほんのり赤くなった。

「立花さん、留守番ご苦労様!矢田さんと若葉さんももう戻ってたのか、二人ともお疲れさん!」

そこへ会場からいったん戻って来た総務チームリーダーの原田さんの大きな声が響いた。

原田チームリーダーの後ろから、ぞろぞろと総務部スタッフ達が自分の席につき、一気に静かな総務部が普段の雰囲気に変わった。

萌と目が合った私はこっくりと頷き目配せをする。

そして、立花さんの方へつかつかと歩みでると、「私たちもあまり時間ないんで、ちゃっちゃとやっちゃいましょ」と言って手を差し出した。

「ん?どうした?」

三人の妙な雰囲気を察した原田チームリーダーが席から首を伸ばして尋ねる。

「あのですねぇ、」

答えようとした私の言葉をすぐに遮って立花さんが嘘みたいな笑顔を作って言った。

「はい、矢田さん、このUSBよ。申し訳ないけれど至急プリントアウトお願い」

そして、私の手のひらにUSBを強めに押し付ける。

「大丈夫かぁ?」

間延びした原田さんの声が背後に聞こえたけれど、立花さんが笑顔のままオッケーサインを出していた。

何がオッケーだ。
ったく。

私は口をへの字にして萌の方に顔を向け苦笑した。

ようやく少し緊張がほぐれたのか泣きそうな目で微笑んだ萌の耳元で小さくささやく。

「とりあえず今回は私がやっとくから、大丈夫よ」

「ありがとうございます」

萌は静かに頭を下げた。