「前から思ってたんだけど、美由紀は竹部さんと親しいの?」

実はずっと気になってたことをふいに尋ねてみた。

だって、合コンの時、美由紀の代理で来たってこと知ってたのは彼だけだったから。

駅前のイチョウ並木がさわさわと音を立ててそよいでいる。

秋を目前にイチョウは黄金色に輝いていた。

「そうね。仕事で行く病院のお医者様達とはそれなりにね。どうして?」

「合コンの時、私が美由紀の代理だってこと知ってたから、親しいのかなって思ってて」

「親しいってほどでもないけれど、丁度仕事で電話を掛けた時にそういう話になっただけ。気にしてた?ごめんね、心配するようなことないから安心して」

「別に心配なんかしてないよー。なんとなく、竹部さんと美由紀って並んだらお似合いだなって思ってたし」

「お似合い?全然だわ。彼とは全く格が違い過ぎる」

「そういうなら私だってそうじゃない」

「そんなことないわ。だって、美南は借金なんて抱えてないでしょう?」

「そりゃそうだけど……」

美由紀にとって借金は、彼女の人生を左右する大きな錘になってるんだ。

早く借金がなくなればいいのに。

きっとそれさえなくなれば、彼女の人生は何の迷いもなく明るく照らされるはず。

「ごめん、今日は借金の愚痴ばっかりで美南も疲れちゃうわね」

「全然そんなことないよ」

美由紀の苦しみはきっと美由紀にしかわからない。

私には話を聞くだけしかできないけれど、少しでも話すことで美由紀が発散できるなら全然かまわない。

「つらくなった時はいつでも話してね」

いつの間にか駅に着いていた。

彼女は微笑み頷くと、手を振ってそのまま改札を抜けていった。