どこまでも続く背の高い石垣が迷路に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥いらせる。

いくつもの門を潜り、ようやく本丸前の広場に到着した。

城は想像以上に高い位置に立っていて、その広場から松山の街が一望できた。

ようやくほどかれた手で、なんとか平静を装いつつ額の汗をぬぐう。

翔と手を繋ぐなんて初めてのことだったから必要以上にドキドキ戸惑う自分がいる。

手を繋いだのも、一人の友人として?

背負うよりは負担がないからだったのかもしれない、ただそれだけだと、うぬぼれそうになる自分に言い聞かせた。

「天守閣からの眺めはここよりもいいらしいよ。もうひとがんばりする?」

「もちろん」

私は持ってきたお茶を飲みながら頷いた。

目の前に構える松山城は整然としたとても清潔感のある城。

山の空気が城を乱れさせない独特の緊張をまとわせている。

早速向かった天守閣からの眺めも最高で、更に高い位置から街を見下ろすことができる。

「なんだか今までにない達成感があるお城だわ」

街から吹き上げる風を感じながら翔に言った。

「うん、気持ちいいね。とてもいい城だ」

翔は前髪をかき上げ、私に視線を向け微笑む。

彼の髪をかき上げる長い指がさっき私の手を握っていた同じ指だと思ったら、顔が熱くなりそれ以上翔の顔を見ていられなくなった。

「どうした?顔赤いけどちょっと疲れた?」

そんな私の気も知らずに、翔は私の顔を心配そうに覗き込む。