『吐き出さなくても、美南と一緒に笑ってたら全部消化されるよ』

翔はとても穏やかな声でそう言った。

胸の奥がジンと熱くなる。

『お前といたら元気になるんだ。吐き出すと結局後味悪くなるだろう?だけど吐き出さなくても消化されるならこれ以上楽なことはない。正直、そんな力がある美南ってすごいと思うぞ』

「なにそれ」

それ以上は何も言えなかった。

だって泣きそうだったから。

そんな風に思ってくれてたんだ。

好きとか、恋愛感情とかそんな単純な気持ち以上に、彼の私に対する思いが伝わってくる。

翔が私にとって大切であるように、翔にとっても私がそういう存在であったことに感動していた。

『こんな俺とずっと付き合ってくれてありがとな』

早く電話切らなくちゃ。

涙があふれて、奴に泣いてることがばれちゃう。

『お前が幸せを掴む時まではそばにいさせてもらうよ。もうあまり時間がないかもしれないけどな』

何言ってんだろう。

まるで私のこと好きみたいなことをこの間は言ってたのに、どうして今は突き放すような言い方するの?

翔の中で何かが変わったんだろうか。

そんなことはどうでもいい。

私のこの気持ちの高ぶりをどうしてくれるの?

翔を知りたいと思って知ったら、私の気持ちが混乱している。

これまで翔に抱いていた気持ちがどんどん崩れ落ちて、裸になった自分が翔を強く求めていた。

涙がこぼれ落ちて、胸の奥がどくどくと激しく脈打っている。

「疲れてるのに話してくれてありがとう。おやすみ」

それだけ言うのがやっとで、電話を切った。

リビングの時計はもう既に1時を回っていた。