そのあとは、動揺が振り切れないまま天守閣の中を散策したり、時間の経過とともに表情の変わる城の姿を撮影した。

せっかくの松本城だっていうのに、sho-に出会ってしまったせいで今一つ気分が乗らない。

普段ならもう少し城を満喫しているところだけれど、早々にホテルに引き上げることにした。

ホテルは市街地にある中堅どころのビジネスホテル。

一人だからそんなに高い場所に泊まる必要もない。

最低限のアメニティグッズが揃い、きれいなベッドがあれば十分。

宿泊するホテルはビジネスの割に部屋も広くてきれいだったので一気にテンションが上がる。

周辺にはコンビニも飲食店もあるので食事にも困らなさそうだ。

きれいな部屋で一休みしたおかげでsho-のことは半分以上忘れられた。

夜ご飯を取るために小さめのリュックを背負ってホテルの外に出ることにする。

もう5月を過ぎ、昼間は長袖シャツ一枚で大丈夫だけれど夕方はまだ少し冷える。

長野は東京よりもやや気温も低いような気がしたので持ってきたベージュの上着を羽織った。

外はすっかり日が落ち、駅前の大通りは昼間と違って電灯で明るく照らされた活気のある街に変わっている。

夜知らない街を一人でウロウロすることに慣れていない私は駅前すぐの小さな居酒屋の暖簾をくぐった。