道が混まないうちにと、早めに大阪に向かうことになった。

既に病院の駐車場に移動していた車に乗り込む。

昨晩のことがあったからか私が意識しすぎて、助手席で座ることすらなんだかぎこちない。

普段通りしゃべればいいのに、会話の糸口を必死に探してる自分が情けなくなった。

そんな私の異変に翔が気づかないわけがない。

沈黙が続くドライブの中、後方座席で祖母の寝息が聞こえてきた。

静かなドライブほど眠気を襲うものはないよね。まぁ、祖母は疲れてるからゆっくり寝ててもらいましょうか。

祖母が寝ているのを確認してまた正面を向いた時、突然翔がくすくす笑い出した。

「なに?」

前を向いたまま口をとがらせる。

「だって、美南、今朝からずっと変だからさ」

「変って?」

横目でちらっと翔の横顔を盗み見た。

端整な横顔が少し笑っている。

震える彼のまつ毛、こんなに長くてきれいだったかな。

「どうした?昨晩のことまだ気にしてる?」

まさか翔から振ってくるなんて思いもしなかったから、胸が大きく震え思わずごくりと唾を呑み込んだ。

「気にするって?」

敢えて、自分から言い出したくなくて翔に振り返してみる。

「俺が抱きしめたりしたこと」

ドクン。

そんなはっきり言わないでよ。

鼓動が次第に早くなり、顔が火照ってきた。

それでなくても、どういう表情したらいいのかわらかないのに。