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翌朝、荷物をまとめて病院に向かうために部屋を出る。

チェックアウトしようとフロントに行ったら、既に翔が私たちの部屋の分の清算も終えチェックアウトの手続きも済んでいた。

ほんと、やること早いんだから。

荷物を肩にかけなおし、急いで病院に向かった。

土曜は午前診があるからか、朝早くから一階ロビーには人であふれかえっている。

ロビーの奥にあるエレベーターホール前に祖母が座る車いすがあり、その横に翔がかがんで祖母に笑いかけているのが見えた。

肩からずり落ちた旅行バッグをそのままに翔と祖母の元に走っていく。

「翔!」

「あ。来た来た」

翔は疲れを微塵も感じさせない爽やかな笑顔を向けた立ち上がった。

昨晩の名残が私の体中を熱くする。

こんなの変だと思いつつ、一度翔から目を逸らし呼吸を整えた。

「昨晩はありがとう。助かったわ。それにおいしい食事もありがとう」

「おいしかった?」

「おいしくないわけなんかないでしょ」

胸の奥がじんわりと熱くなっていることに気を逸らすように祖母に視線を移す。

「おばあちゃん、昨日はごめんね。大丈夫だった?」

祖母は私を見上げると、目を細めて「うんうん」と何度も頷いた。

「点滴してもらってすっかり元気になったわ。それに一晩中、男前の翔さんがそばについてくれてたからね。前以上に元気になったかも」

「もう、おばあちゃんたら」

私はそんな祖母に安心してその肩を優しくさすった。

そんな冗談も言えるくらいだからもう大丈夫だ。

翔に視線を戻すと、彼も穏やかな笑みを湛え頷いた。

「朝一番に紘一がおばあちゃんを診察してくれてね。血液検査も血圧も異常なしだから、今日家に戻って何ら問題ないそうだ」

「何から何まで本当にありがとう」

「とんでもない。俺がいながら入院までさせちゃって、逆に申し訳なかった。お母さんにもよろしく伝えておいて」

翔は普段そんなに私に頭を下げられることがないからかどうしていいのかわからない表情で頭を掻いた。