鍋に少し残った牛乳は、しばしどうするか考えて、そのままホットミルクとして飲むことにして、シンクの上に作りつけられた収納を開け、そこからもう一つマグカップを取り出してそちらに移す。

両手にマグカップを持って振り返ると、妙に力の入った夏歩の横顔が見えて、思わず津田は笑ってしまった。


「なっちゃんはほんと、素直じゃないよね。でもわかりやすいところが凄く可愛い」

「バカにしてる?」

「可愛いは褒め言葉だよ」


はい、と夏歩の前にマグカップを一つ置いて、津田はもう一つを手に先ほどまで座っていた位置に腰を下ろす。

テーブルを挟んで、向かい合わせ。それほど大きなテーブルでもないから、そこそこ距離は近い。


「……なによ」


座ってからずっと、真っすぐ自分を見つめる津田の視線を、夏歩は逸らさずあえて睨みつけるようにして受け止める。