きっと心の中では、相変わらず素直じゃないなとでも思っているのだろう。
そう思われていることが、夏歩にはとんでもなく腹立たしい。
その気持ちを込めて突き刺すような視線をキッチンにいる背中に送っていると、津田は皿を一旦シンクに置いて、洗う前にコンロ下の収納から取り出した小さめの片手鍋に、冷蔵庫から出した牛乳を注いで火にかけた。
妙に大きくわざとらしい動作で、後ろの夏歩に、これからココアを作りますよ、牛乳で作りますよとアピールするようにして。
ココアでつれると思ったら大間違いだとは言ったものの、津田がそうしてわかりやすく支度を始めると、それまでの夏歩の不機嫌面にも変化が現れる。
でも、それを津田に見られて、やっぱりココアで簡単につれるとは思われたくなかったから、夏歩はワクワクしそうになる心を必死で抑え込んで、顔も緩まないように表情筋に力を入れる。
その間に津田は、パパっと洗い物を済ませて水切りかごに入れると、マグカップとスプーン、それからココアの粉を用意する。
牛乳が温まったところで火を止めると、粉の入ったマグカップにゆっくりと注いでいく。一度手を止めて粉を溶かすようにスプーンでかき混ぜ、それからまたゆっくりと。