「なっちゃんが、俺と付き合ってくれたらって言ったら、どうする?」


はあ?と声を上げた夏歩を笑顔で見つめて、津田は返答を待つ。答えなんて、わかりきっているはずなのに。


「この状況で、いいよって言うわけあるか。て言うか、そういうところがずるいし卑怯だって言ってるの!」


やはり答えはわかっていたのだろう、「そっか、残念」と軽い調子で零して津田は立ち上がり、空になった二つの皿を当たり前のように重ねてシンクに運ぶ。


「でも、気が変わったらいつでも言ってね」

「変わるわけないでしょ!」

「じゃあ、気長に待つよ。今までも、ずっとそうだったしね」


だから、変わらないってば!と言ったところで、津田のどこか余裕ぶった笑顔は変わらない。
逆に夏歩がムスッと不機嫌になって、不満顔で、キッチンに向かう津田の背中を睨みつけた。


「私、津田くんのことなんて好きじゃないから」

「はいはい、わかってるよ」

「全然わかってない!!」