うぐ……っと夏歩が言葉に詰まったところで、津田は「早く食べないと冷めるよ」と笑顔で促し、自分もスプーンを口に運ぶ。
確かに、もとはと言えば一人で帰れなくなるほど酔っ払った夏歩が悪いけれど、それは夏歩だってわかっているけれど、だからって津田がちっともずるくないかと言えばそれは違うだろう。
ムスッと津田を睨みつけながら、夏歩もスプーンを動かしてオムライスを口に運ぶ。
腹立たしいけれど、オムライスは美味しい。
夏歩はやけ食いかと思われるような勢いでオムライスを平らげると、一息入れるようにしばらく黙って、それから改めて口を開く。
「どうしたら返してくれるの」
みなまで言わずともわかっているくせに、津田はスプーンを咥えたまま、すっとぼけたように「ん?」と首を傾げる。
「だから、鍵!どうしたら返してくれるのかって聞いてるの」
んー……と唸りながら行儀悪く咥えたスプーンを上下に動かしていた津田は、やがて口からスプーンを引き抜いてヘラっと笑う。