「喜んで欲しいんだったら、今すぐ鍵を返してくれたら盛大に喜ぶけど」

「それはちょっと無理かな」


なんでよ!と声を荒らげる夏歩とは対照的に、津田は涼しい顔でオムライスを口に運ぶ。
その態度がまた、夏歩の癪にさわる。


「何で無理なのよ!そもそもその鍵は私の物でしょ」

「そうだったけど、今は俺の物だよ。だって、なっちゃんがくれたんだから」

「あげてない!!」

「“頂戴”って言ったら、“はーい”って確かに言ったよ」

「それは!……だって、あれは!!…………それってずるいと思う!」


そんなことを言ったって津田が素直に鍵を返すわけがないのだけれど、他に何も言葉が浮かんでこなかったのだからしょうがない。

こうなってくると、夏歩の負けは濃厚だ。元より、勝ち目はほとんどなかったけれど。


「津田くんはずるい、卑怯だ!」

「俺はなっちゃん合意のもとで、本人から直接鍵を貰ったわけだから、ずるくも卑怯でもありません。自分が覚えてないからって、俺は責めるのはどうなの?」