「ハート描いてあげようか。俺、結構上手いよ」
「いらな、あっ、ちょっと!!」
「なっちゃんには特別に、二つ描いてあげる」
「いらないってば、勝手に描くな!!」
玉子の上に大小二つのハートを綺麗に描き上げた津田は、得意げにその皿を夏歩の前に置く。
それを、夏歩はしばらくむくれながら眺めて、やがて大きい方のハートに、わざと真ん中からスプーンを差し込んだ。
それはもう遠慮なく、ぶすりと刺して、ハートを真っ二つに割ってやる。
ああ……!と津田が悲しげな声をあげたので、それで夏歩は満足して機嫌を直す。
そのままでは流石に多すぎて口には入らないので、そこから更に玉子にスプーンを入れ、下のチキンライスも一緒に掬って口に入れる。
バターの風味が効いた玉子は火の入り方が絶妙で、夏歩のオーダー通りのとろとろ。下のチキンライスには、みじん切りの玉ねぎとごろっと大きめの鶏肉が入っている。
「美味しい?なっちゃん」
チラッと顔を上げたら笑顔の津田と目が合って、夏歩は無言でふいっとそっぽを向く。