勢いに任せてバンっとテーブルを叩いたら、「気を付けないとココアが零れるよ」と津田から注意を受ける。


「俺がここにいることで、なっちゃんにメリットはあってもデメリットは一つもないと思うけど」

「なんでそう思えるのよ!むしろデメリットしかない」

「例えば?」


えっ……と思わず呟いた夏歩に、津田はもう一度「例えばなに?」と問いかける。顔が、完全に笑っていた。楽しんでいた。


「た、例えばって……それは、もう、色々と……」

「その“色々”が聞きたいんだよね。なっちゃんにご迷惑をおかけしているとしたら、それは俺としても本意じゃないから自重するよ」


で、例えばなあに?と三度目の問い。


「だ、だから、それは……ほら、あの……えっと……」


うんうん、と楽しげに頷きながら聞いていた津田は、ついに言葉も出てこなくなって、意味もなくパクパクと口を動かす夏歩が完全に口を閉じるまで笑顔で待っていた。