夏歩の渾身の拒否を、津田は「またまたあ」と笑って受け流す。
「朝ご飯、美味しかったよね?だっておかわりしたもんね、なっちゃん。それにお弁当も、持って行く時は相当渋ってたのに、完食だったし。それに見てほら」
“ほら”と両腕を広げて部屋全体を示す津田に、夏歩もようやく気が付いた。
「……また、勝手に片付けたの」
「だって泥棒に入られたみたいな散らかしようだったから。せっかく綺麗にしたのに、なっちゃんってば散らかし上手だよね。片付けがいがあったよ」
「もとはと言えば、津田くんが鍵を返さないのがいけないんでしょ!あと、さっきお弁当って、ひとの鞄勝手にあさらないでよ!」
「あさってないよ。寄せる時に中にあるのが見えたから、引っ張り出しただけ」
他には何かある?と言いたげな津田の顔を、夏歩は悔しげに睨みつける。
何を言っても、言い負かされる予感しかしなかった。
「なっちゃんはさ、自他共に認める家事の苦手な人でしょ。反対に俺は、誰もが認める家事の得意な人。これはもう、なっちゃんには完全に俺が要りようでしょ?」
「自他共に認めてようが、誰もが認めてようが、いらんって言ってるでしょ!」