文句を言いつつも夏歩は足元に鞄を落とすと、ずかずかとクローゼットに向かってそこから着替えを取り出し、ザっと部屋の中に視線を走らせ、その際目が合った津田を睨みつけてから部屋を出る。

どこ行くの?と聞こえた声は無視して後ろ手にドアを閉めると、洗面所にするかお風呂場にするか、しばし廊下に立ち止まって左右に視線を動かし迷った結果、お風呂場に入って脱衣所で持ってきた部屋着に着替えた。

そうして部屋に戻ると、その辺の床に無造作に置いたはずの鞄がハンガーラックの端にかかっていて、その前でハンガーを手に夏歩に向かって手を伸ばす津田がいた。


「鞄はここに下げてって昨日言ったでしょ。ほら、服貸して。その辺に放っておいたら皺になるよ」

「……いい、自分でやるから」


そう?じゃあ、はい。と津田は歩いてきて夏歩にハンガーを渡すと、そのままキッチンへ。

反射で受け取ってしまったハンガーに視線を落とし、何やらキッチンでカチャカチャやっている津田の背中をチラッと見て、夏歩はハンガーに持っていた服をかけながらハンガーラックに向かった。