お弁当だって、毎日とはいかずともこれからは自分で作ろうと、夏の暑い日は保冷も出来るというランチバッグと揃いの弁当箱を、美織と一緒に選びに行って購入した。
そのランチバッグが、現在新品同然でテーブルの上に載っている。言わずもがなだが、中の弁当箱もほぼ新品だ。
何か言いたげな様子の美織から、夏歩はそっと視線を逸らした。
それで美織は察してくれたらしく、夏歩の耳にため息が届く。
「お弁当持たせてくれたってことは、津田は家にいたってこと?二日続けて泊めたの?」
「まさか!吐き気も収まってだいぶ具合がマシになってきたところで無理やり追い出したんだけど、……今朝になったらなぜかまたいたの」
部屋の中にいるはずのない男の姿を見つけた時、夏歩は危うく悲鳴をあげそうになった。
何をしているのか、なぜいるのか、どうやって入ったのかと問い詰めたら、津田はヘラっと笑ってズボンのポケットから鍵を取り出して見せたのだ。
「知らない間に、鍵取られた……」
津田曰く、夏歩を背負ってアパートまで送った時、「鍵頂戴」と言ったら「はーい」と大変いいお返事で素直に鍵を渡したんだとか。
「なるほど。やられたわね、夏歩」