そこで頷くのはなんだか良くないような気がしたので、夏歩は曖昧に濁しておく。美織は構うことなく


「これだけ揃ってたら充分に優良物件だと思うけど」


そう締めくくった。


「いくら一途とは言っても、津田だっていつまでも夏歩ばっかり追いかけてはくれないのよ?もしくは、そのうち誰かに取られちゃうかも」


言い終わると同時に美織はストローを咥え、夏歩の反応を見ながら野菜ジュースを吸い込む。
夏歩はしばらく黙って下を向いて、膝の上にあるランチバッグをジッと見つめる。

美織は、そんな夏歩から腕時計にチラッと視線を動かして、ストローから口を放した。


「まあそう言うわけだから、少しは前向きに考えてあげてもいいんじゃないってことで。で、夏歩。お昼はどうしたの?早く食べないと時間なくなるわよ」


その瞬間、夏歩の肩がピクッと動いて、顔がゆっくりと上を向く。


「持ってきてないわけじゃないわよね。それとも、持ってくるの忘れたけどお財布も忘れたとか?言ってくれたら貸すわよ。今からでも買いに――」

「いや!あの、違うの。……その……あるには、あるんだけど……」